行政書士が解説!国際結婚した夫婦が日本で会社設立するポイント
このページでは、国際結婚している夫婦向けに、日本で会社を作って事業を行いたい場合に注意するポイントについて解説しています。
日本には、株式会社と合同会社の2種類がある
日本にある株式会社の数は約250万社、合同会社は約12万社あります。
株式会社と合同会社の違いは色々ありますが、大きな違いは設立にかかる費用と知名度です。
株式会社を設立する為には登録免許税や定款認証などに約20万円の費用がかかります。
これは、法務局や公証役場に支払う費用であり、自分で手続きしてもかかります。
一方、合同会社の設立にかかる費用は登録免許税の6万円となります。
また、会社をつくったあとに、会社名義の銀行口座を作る必要がありますが、一部の金融機関では新規設立の合同会社の場合、法人口座の設立が非常に難しいです。
株式会社をつくってから合同会社に変更することは出来ません。また、その逆の変更もできません。
どちらの形態にするか迷った場合、事業が拡大していく可能性があるなら株式会社をお勧めします。逆に、取引先が決まっていて、その決まった取引先とだけ事業を行う場合は合同会社でも問題ないかと思います。
また、お客様が法人か個人かも考えておきましょう。お客様が個人の場合、合同会社にしておくと誤解を受ける可能性があります。例えば、身内だけで経営しているような経営規模が小さい会社だと思われたり、合同会社自体のことをあまり知らない人から、怪しい事業をしているのではないかと勘違いされることがあります。
会社設立に必要な書類とは
会社設立に必要な書類は発起人(お金を出す人)が法人なのか個人なのかによって異なります。またその法人や個人が日本にあるのか・住んでいるのか、日本に住んでいない・日本にないのかによっても異なってきます。必要書類が一番少ないケースは日本人個人が発起人となるケースです。
この個人には、国籍は関係ありません。例えば、国際結婚した夫婦が共同で発起人となっても良いですし、どちらか一方が発起人となっても構いません。こうした場合、会社設立に必要な書類は、発起人の印鑑証明書です。
日本に住んでいる個人の場合(住民票がある個人の場合)、市区町村役場にいけば印鑑証明書が発行されます。
ただし外国人の場合は、在留カードと同じ氏名の表記で印鑑証明書が発行されます。もし在留カードにアルファベットと漢字の併記がされている場合、その在留カードと同じ漢字で会社役員として登記されます。
もし在留カードにアルファベット表記しかない場合、定款を作成する時にカタカナで表記する箇所があるため、カタカナでの名前の表記を決めておいてください。後から役員の名前を変えるのは非常に難しいですので、カタカナ表記は慎重に考えてください。
次に、日本に住んでいない個人が会社をつくる時には、母国のノータリーオフィス(公証役場)から発行されたサイン証明書が必要です。サイン証明書に記載する内容は、日本の印鑑証明書と同じ内容です。つまり、氏名、生年月日、現住所、それからサインです。母国でサイン証明書をつくる場合、現住所が抜けていることが多いですので注意してください。現住所が抜けたサイン証明書を提出した場合、現住所を証明する他の公的書類とその翻訳が必要となるので、手続きが煩雑になります。
次に法人が発起人になる場合について簡単に説明します。日本にある法人が発起人になる場合は、その法人の登記事項証明書と法人の印鑑証明書が必要になります。海外にある法人が発起人になる場合、その国の登記事項証明書に相当するもの、会社代表者のサイン証明書が必要になります。いずれも日本語訳が必要です。日本語訳は専門用語が多く、かなり難しい為、海外の邦人が発起人になる場合は、専門家に依頼した方がスムーズです。
会社設立にかかる費用
会社設立にかかる費用は、日本の役所に支払う費用(法定費用)+専門家(行政書士・司法書士 等)に支払う費用となります。
専門家に依頼した場合、電子定款に対応していますので、定款認証費用 (5万円)が不要となります。また、専門家が法務局に行って手続きをしてくれます。
当事務所の経験上、多くの法務局では外国人が発起人となる会社設立に慣れていません。サイン証明書や印鑑証明書の書式、定款の書き方などで何度も補正が発生することがよくあります。
国際結婚した夫婦が日本で会社設立するデメリット
日本に住む外国人が、永住申請(永住者ビザの取得)する場合、外国人個人の状況に加え、外国人とその日本人配偶者が経営する会社の状況も審査されます。
例えば、その外国人が経営する会社が債務超過になっていたり、赤字決算が連続していたりすると永住審査でかなり不利となります。また、会社を設立すると社会保険にも加入する義務があります。例え小さな会社でも社会保険に加入しておく必要があります。経営する会社が社会保険未加入であると、永住者ビザが許可にならない可能性が高いです。近い将来永住申請を考えている場合、会社設立を慎重に検討してください。場合によっては永住者ビザをとってから会社設立した方が、メリットが大きいことがあります。
会社を作る時に決めること
会社を作るだけでよいのか、将来外国人を雇用する可能性があるのか?
外国人を雇用する可能性なし | 外国人を雇用する可能性あり | |
資本金 | 1円以上 | 目安100万円以上(※1) |
事務所 | 不要 | 必要 |
事業内容 | 事業計画どおりでOK | 外国人材を活用できる事業内容が含まれていたほうが望ましい |
売上 | 不問 | 目安1,000万円以上(※2) |
外国人の母国にある会社の子会社を日本で作る時のポイント
外国人が母国で会社を持っている場合、日本に子会社をつくることで母国の会社で働く社員を日本の子会社に転勤させることも可能です。この時の就労ビザは企業内転勤ビザといいます。企業内転勤ビザは、一般的な就労ビザである技人国ビザと異なり、学歴要件がありません。
※技人国ビザとは
日本の企業でホワイトカラーの仕事をする時に必要な就労ビザのこと。原則、大学卒という学歴要件がある。
企業内転勤ビザの大きな要件は、以下の2つです。
①母国の会社と日本の会社の間に資本関係があること(20%以上の株式保有)
②直近1年以上母国の会社で常勤社員として勤務していること
ですので、将来母国から社員を日本に呼び寄せる可能性がある場合、20%以上の資本関係ができるように会社をつくってください。
また、企業内転勤で呼ぶためには、関連会社であることを外形的に証明するため、出来れば同じ名前を使った方が良いです。例えば、母国の会社が「ABCコーポレーション」だった場合、日本の会社は「ABCジャパン株式会社」といった感じです。
ここからは、国際結婚された夫婦が日本で会社をつくる場合、人気のある事業についてポイントを説明します。
旅行会社を作る時に必要な条件
日本で旅行会社をつくるためには旅行業許可という許可が必要です。これは都道府県庁に申請します。旅行業許可は第1種、第2種、第3種、旅行代理店業の許可があります。
最初から第1種、第2種をとることは非常に難しいので、最初は第3種をとることが多いです。旅行業許可に似たものとして、ランドオペレーターという資格があります。これは許可制ではなく、講習を受ければ誰でもとれる資格となります。ランドオペレーターとは、海外の旅行会社(多くは外国人の母国の旅行会社)と契約して日本のホテルや新幹線等の切符を手配することが出来る資格です。 ランドオペレーターの資格を持っていれば、こうしたことを業として繰り返し行っていても違法となりません。
なお、海外の航空会社と契約して、その航空券を外国人向けにインターネット等で販売することは特に許可がいりません。例えば、中国のLLCと契約して、中国人向けに航空券をネットで販売するといった事業です。
中古品の輸出入会社を作る時に必要な条件
中古自動車や中古のブランドバッグ、宝石等を輸出入する事業を行う場合、古物商営業許可をとる必要があります。古物商営業許可は最寄りの警察署でとります。
マンションに住んでいる場合、マンションの管理組合から承諾書をもらう必要があります。折角会社をつくっても、営業できない可能性がありますので、まず古物商許可がとれるかどうかをしっかり調べましょう。
多くの警察署では、外国人の古物商営業許可に慣れていません。古物商営業許可は、行政書士事務所に全て任せたほうが良いです。
人材派遣業、人材紹介業を行う時に必要な条件
日本で人材派遣業や人材紹介業を行う場合、労働局の許可が必要です。この許可をとるためには、資本金や事務所の広さ、設備など、いくつかの条件があります。例えば、人材派遣業を行うためには、原則資本金2000万円以上、事務所の広さ20㎡以上、個室の応接室などが必要となります。
なお、既存の人材会社と契約して、外国人のリクルーティング活動だけを行う会社を立ち上げたいというケースもありますが、リクルーティング活動だけであってもこれらの免許は必要となります。無資格でリクルーティング活動を反復継続して行っていると職業安定法違反となり、今後のビザ更新や永住申請に不利になりますので、十分注意してください。
不動産業を行う時に必要な条件
日本で不動産の売買や賃貸、仲介等を行う場合、宅建業営業許可が必要です。この許可をとるためには、社員5人に1人以上の宅地建物取引士が必要となります。
その他、事務所の広さや設備に対する細かい条件もあります。
芸能プロダクションをつくる時に必要な条件
国際結婚をされたご夫婦の中には、外国人の母国の人脈を生かし、現地のタレントやアーティスト、芸術家などを日本に呼び、ファンイベントやコンサートなどのコーディネートをしたいと思っている方もおられると思います。
当事務所にも、時々、韓国俳優を日本に呼んでイベントを開く会社をつくりたいとか、ロシアの社交ダンサーを日本に呼んで短期講習を開きたいといったご相談があります。
日本で芸能プロダクションや芸能人のコーディネートをする業務を行う場合、特に許認可を得る必要はありません。しかし、外国人タレントや芸術家を日本に呼ぶためのビザ(興行ビザ)の取得が都度必要になります。興行ビザは1号から4号まであり、それぞれ非常に細かく複雑な条件があります。一概に「こういう場合はこういう書類を用意すればよい」というものではありません。
ですので、海外芸能人の招へい等をビジネスとする場合、興行ビザに強い行政書士事務所と顧問契約することが多いです。興行ビザがとれなければ、そもそもイベントが成立しませんので、イベントの企画段階からサポートしてくれる行政書士事務所を探しましょう。
もちろん、当事務所でも対応可能です。
この記事を作成した人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一